執筆法について

 執筆法、すなわち筆を握る方法については、「単鉤法(たんこうほう)=人差指を1本だけ筆管にかけて握る方法。いわゆる鉛筆持ち」や「双鉤法(そうこうほう)=人差指と中指の2本を筆管にかけて握る方法」、「四指斉頭法(ししせいとうほう)=4本の指を揃えて筆管を握る方法」などが知られているところです。
 執筆法を真に会得するうえで最も重要となるのは、「手首や指をむやみに動かさず、腕の動きだけで運筆するように心がける」ということです。手首や指をむやみに動かさないほうがよいということは、故人の書論にもよく説かれていることなのですが、その理屈としては、次のことが考えられます。
 軟らかい毛筆を遣って線を安定的に引くためには、起筆から収筆まで直筆が維持されなければなりません。そのためには、筆管を垂直にしたまま紙面に並行に筆を移動させることが必要となります。もしこの時、指などが動いてしまうと、筆管は並行移動ではなくなり、空中のある1点を軸にして一定方向に筆が寝てしまい、直筆が維持できなくなってしまうからです。
 実際の書作には、厳密に全く手首や指を動かさないといったことはなく、ある程度の不安定さから出る線の妙味も利用するのですが、まず基本は、この安定さを確立することから始める必要があります。くれぐれも、確固たる安定さを確立する前に、不安定さばかり追及するといった茶番には注意が必要です。
 ちなみに、私の執筆法は、専ら「双鉤法」です(大字を書く場合は四指斉頭法になります)。初学のころ、より指の動きが抑えられるとの理由で師匠から勧められたのですが、当時は、その重要性が今ほど解らずにおりました。何時だったか、細字の線の安定さが師匠のそれに程遠いと痛切に感じ、一念発起、試行錯誤の末、さも自分の手首から筆が直接生えているかのような感覚をもって、徹底的に手指を動かさないことを心がけて訓練に励んだことを覚えております。
 皆さんも是非、腕だけで運筆するよう練習されることをお勧めします。半年なり1年なり経つうちには、きっと今以上に執筆法が確立し、線に安定さが増すことでしょう。