書法の着眼点

 私が普段、書作品を審査し評価する場合、一体どれくらいの項目に着目しているのかを以下に整理してみたところ78項目になりました。
 まず技術面と精神面の2章に大別し、技術面は、基本的用筆、間架結構法、布置章法、筆勢の4節に、精神面は、選択用筆の適時性、気質、自己評価の程度の3節に体系的に分かれています。
 実際の審査にあたっては、これらすべてを項目順にチェックするという作業を行っているわけではなく、どちらかといえば感覚的・直感的に作品を評価するのですが、気になる部分がある場合は、決まっていつも以下の項目となるといった具合です。皆様の日頃のご研鑽の一助となればと思い掲載いたします。

【技術面】
・基本的用筆(起筆、送筆、収筆の筆致(転折・祓い・跳ねを含む)、加圧)
  1 空画の動きを受けて理に適った起筆がなされているか
  2 起筆が慎重または無造作に過ぎていないか
  3 送筆初期における加圧が充分であるか
  4 送筆初期での加圧による筆鋒の弾力を活かした送筆がなされているか
  5 送筆が慎重または無造作に過ぎていないか
  6 送筆が作為に過ぎないか
  7 安定した送筆がなされているか
  8 送筆中または収筆に向かって無意味な加圧がなされていないか
  9 収筆で筆鋒が頓挫していないか
 10 作為に過ぎる収筆となっていないか
 11 転折で筆鋒が頓挫していないか
 12 作為に過ぎる転折となっていないか
 13 慎重または無造作に過ぎる転折となっていないか
 14 転折で加圧が足りないまたは必要以上の加圧となっていないか
 15 慎重または無造作すぎる祓いとなっていないか
 16 筆鋒の弾力を活かした祓いとなっているか
 17 伸びやかな祓いとなっているか
 18 作為に過ぎる祓いとなっていないか
 19 祓い中に無意味な加圧がないか
 20 筆鋒が頓挫した跳ねとなっていないか
 21 慎重または無造作に過ぎる跳ねとなっていないか
 22 作為に過ぎる跳ねとなっていないか
・間架結構法(整斉と参差(バランス・デフォルメ)、点画の細太・長短変化、筆路)
 23 点画の整正(交差の定量的左右・上下バランス)は理に適っているか
 24 点画の整斉(点画の細太、筆勢、線質、空間の広がり・緊張度合い等を考慮した定性的バランス)は理に適っているか
 25 慎重または無造作に過ぎる参差(不調和・デフォルメ)となっていないか
 26 作為に過ぎる参差(不調和・デフォルメ)となっていないか
 27 慎重または無造作に過ぎる細太の変化となっていないか
 28 作為に過ぎる細太の変化となっていないか
 29 慎重または無造作に過ぎる長短の変化となっていないか
 30 作為に過ぎる長短の変化となっていないか
 31 筆路は明快であるか
 32 基本的用筆と結体とが同程度に考慮されているか
・布置章法(整斉と参差(バランス・デフォルメ)、文字の大小・長短・肥痩)
 33 布置の整正(布置の定量的左右・上下バランス)は理に適っているか
 34 布置の整斉(文字の大小、筆勢、線質、空間の広がり・緊張度合い等を考慮した定性的バランス)は理に適っているか
 35 慎重または無造作に過ぎる参差(不調和・デフォルメ)となっていないか
 36 作為に過ぎる参差(不調和・デフォルメ)となっていないか
 37 慎重または無造作に過ぎる大小の変化となっていないか
 38 作為に過ぎる大小の変化となっていないか
 39 慎重または無造作に過ぎる長短の変化となっていないか
 40 作為に過ぎる長短の変化となっていないか
 41 慎重または無造作に過ぎる肥痩の変化となっていないか
 42 作為に過ぎる肥痩の変化となっていないか
 43 調和対応(前文字、隣文字、隣行との関係、全体のバランスを考慮した布置、文字姿態変化、肥痩変化)は理に適っているか
 44 基本的用筆と結体と布置が同程度に考慮されているか
・筆勢(運筆のリズム・伸び、線質の変化、遅速緩急、筆先・筆鋒のテクスチャ(織りなし))
 45 運筆のリズムは自然なものであるか
 46 運筆の伸びは充分であるか
 47 作為に過ぎる運筆のリズム・伸びとなっていないか
 48 慎重または無造作に過ぎる線質の変化となっていないか
 49 作為に過ぎる線質の変化となっていないか
 50 慎重または無造作に過ぎる遅速緩急の変化となっていないか
 51 作為に過ぎる遅速緩急の変化となっていないか
 52 筆の表裏が理に適って遣われているか
 53 慎重または無造作な筆先・筆鋒のテクスチャ(織りなし)となっていないか
 54 作為に過ぎる筆先・筆鋒のテクスチャ(織りなし)となっていないか
 55 調和対応(前文字、隣文字、隣行との関係、全体のバランスを考慮した線質変化)は理に適っているか
 56 基本的用筆と結体と布置と筆勢が同程度に考慮されているか
【精神面】
・選択用筆の適時性(表現された事象に対するもの、自己の実力・境遇に対するもの)
 57 選択する用筆が、その時点までに表現された事象の相乗的な効果あるいは欠損の補完や変化の程度を考慮して選択されているか
 58 基本的用筆が普段の鍛錬によって十分に身に付き、それが自然に発揮されてものであるか
 59 間架結構法が普段の鍛錬によって十分に身に付き、それが自然に発揮されたものであるか
 60 布置章法が普段の鍛錬によって十分に身に付き、それが自然に発揮されてものであるか
 61 筆勢が普段の鍛錬によって十分に身に付き、それが自然に発揮されたものであるか
 62 作為に過ぎる用筆を用いていないか
 63 現時点の実力を真摯に表現しようとしているか
 64 現時点以上の実力を表現しようとすることに気負いはないか
 65 奇を衒うことが芸術であるとの誤った認識に立脚していないか
・気質
 66 覇気があるか
 67 事象を反省し表出に活かしているか
 68 細かなことに頓着しすぎていないか
 69 細心の注意を払っているか
 70 気質が安定しているか
 71 瞬時にかける気迫があるか
 72 穏やかな性情を好むか
 73 躍動的な性情を好むか
 74 萎縮していないか
 75 中庸を保った気質であるか
・自己評価の程度
 76 自己の実力を過小または過大に評価している風はないか
 77 自己の実力を技術面のみで評価している風はないか
 78 自己の実力を技術面を無視して評価している風はないか