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書評連載 〜カフカの愛したガス灯〜

佐々木浩

第5回 『禿鷹』(『カフカ短編集』岩波文庫所収)


 主人公の私が禿鷹に襲われるだけの話だ。
 カフカ以後とはいえ、類似のお話は多々あるだろう。例えば、スピルバーグの巨大トレーラーや人喰い鮫、 キングの狂犬クージョなど。
 されど、『禿鷹』はカフカにしか書くことができないカフカらしいお話だ、と僕は考えている。
 何故なら、禿鷹と私との関係が、悪と善、加害と被害、試練と救済といった図式では片付けられないからだ。 なにせ、禿鷹のくちばしが私の咽喉を突き刺したとたん、禿鷹は私の血によって溺れ死ぬのだから。

 ところで、カフカは書き手として、これ以上はないところまで、書き切る。最終行が閉じられると、 続きを書き足しようがない。少なくとも、文才乏しき僕には、お話の続きは思いつかない。
 それでいて、読み手にしてみれば、お話が終わっているにもかかわらず、首を縦に振る、腑に落ちる、 膝を打つ、などといった身体感覚はやって来ない。むしろ、こめかみやあごを殴られたかのようにKO されてしまっていて、訳が分からなくなる。
 カフカが仕掛ける関係は、ただことではないのだ。禿鷹と私の関係はもちろんのこと、書き手と 読み手の関係にしても。