english literature

イギリス文学史--作家と作品リスト

参考文献 - イギリス文学史 I 講義資料(河内 司著), 「イギリス文学史 I」(岡崎 祥明、関谷 武史著),
G. C. Thornley and Gwyneth Roberts, An Outline of English Literature, Longman

・古代英語時代の文学 (Old English: OE) 700-1100

・中世英語時代の文学 (Middle English: ME) 1100-1500

・近代英語時代の文学 (Modern English: ModE) 1500-


古代英語時代の文学 (Old English: OE) 700-1100

年代 (year) 作家 (writer) 作品 (work) 概要 (description)
7th C. 作者不詳--Northumbria
(ノーサンブリア)の詩人(僧侶)
Beowulf
「ベイオウルフ」
3,182行(2部構成)の叙事詩。Britania の口承物語。北方Jutes族がもたらした英雄物語であり、舞台は現在のデンマーク。Grendel という王国に災いをもたらす怪獣と、Beowulf という英雄との戦いなどが描かれている。古代英語で書かれた写本(10世紀)は、英国の大英博物館(British Museum)に保存されている。
7th C. Caedmon
(キャドモン、ケドモン)
「創世記」 イギリス北東部 Northumbria の主都 Whitby の尼僧院の老僕 Caedmon は、夢の中に出てきた天使のお告げで、天地創造や神を讃える詩を作った。
7th-8th C. Baeda (またはBede, 674-735) Ecclesiastical History of the English
「英国教会史」
Northumbria の牧師ビード尊者 (Bede the venerable) は、ラテン語の聖書を初めて英訳したと言われている。彼は最初の優れた散文作家であり、「英国教会史」を記したことによりこれをもって "英国史学の父" (The Father of English History) と呼ばれるようになった。
8th C. Cynewulf
(キネウルフ)
Elene
「エレーネ」
新約聖書や聖者伝などに材を得た詩。
9th C. Alfred the Great (アルフレッド大王, 849-901) Anglo-Saxon Chronicle
「アングロ・サクソン年代記」
Wessex王であり、古代イギリス散文の発達に大きく貢献したアルフレッド大王は、文武両道であり、本書の監修を務め、自らも Dane 族との戦いの件を加筆したといわれる。彼は、Boethius(ボエティウス)の「哲学の慰安」、Bede の「イギリス国民教会史」、Orosius(オローシウス)の「異教徒伝道史」などを英訳し、国語の普及にも努めた。
10th C. 作者不詳 叙事詩
"Judith の書"
Northumbria のある詩人が「旧約聖書」に材をとり、烈女 "Judith" について歌った宗教的物語詩。全12巻から成るが、残存しているのは350行ほどである。
10th C. AElfric
(エルフリック, 955?-1020?)
Catholic Homilies 「カトリック説教集」(990-92) Winchester のベネディクト派の修道僧であった。ほかに "The lives of Saints 「聖者伝」"を書いた。どちらの書も洗練された散文である。
10th C. Wulfstan
(ウルフスタン, d.1023)
Address to the English
「イギリス人に寄す」
ウルフスタンはヨーク大司教になった人で、すぐれた説教集を残した。
 
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中世英語時代の文学 (Middle English: ME) 1100-1500


年代 (year) 作家 (writer) 作品 (work) 概要 (description)
12th C. Geoffrey of Monmouth
(モンマスのジェフリ)
Historia Regum Britaniae
「ブリトン王歴代史」
ブリトン王の始祖ブルータス(Brut, Brutus)から始まり、アーサー王の武勇伝におよび、ウェールズ王の事蹟で終わる物語。ラテン語で書かれた物語詩。
13th C. Orm (オーム) Ormulum
「オーミュラム」
リンカンシャーの司祭であった Orm は、教会の礼拝時の経文を書いた。これは10,000行にわたる韻文の説教集である。
1220 Bishop Poor Ancrene Rivle; Anchoresses' Rule
「尼僧の戒律」
Salisbury の牧師。隠棲する3人の尼僧のために書かれた戒律で、禁欲に対する同情や、単純で些細な教訓の中に優雅で優しい情操が感じられる散文である。
1220 作者不詳 The Owl and the Nightingale
「梟とナイティンゲイル」
2,000行からなり、宗教詩人と恋愛詩人を代表する梟とナイティンゲイルが、それぞれの詩の優劣を討論する対話形式の寓意詩。
1240 作者不詳 Summer is
y-comen in
「夏は来ぬ」
別名"Cuckoo Song"「カッコーの歌」。楽譜のついた英語の歌として、現存するものでは最古の抒情詩。
1300 作者不詳 Cursor's Mund's
「世界の走者」
村々を回りキリスト教の布教に努めた托鉢僧(Medicant Friar)が書いた宗教詩。北方英語で書かれ、8音節、24,000行の長編詩である。新約聖書に材をとり、天地創造から最後の審判までの事件に伝奇的要素を加えたものである。
1340 Richard Rolle
(リチャード・
ロール,
1290-1349)
The Pricke of Conscience
「良心の苛責」
堕落した托鉢僧への警鐘を唱えた詩。
1370 作者不詳 Sir Gawain and the Green Knights
「サー・ガウェインと緑の騎士」
アーサー王サイクルの物語詩。アーサー王伝説の中の騎士ガウェインを主人公にした抒情詩的物語。中世記の物語文学の中で最も優れた作品。
1381 John Wiclif
(ジョン・ウィクリフ, 1320-84)
--- ローマ・カトリックの化体説(Transubstantiation)に神学上の見地から反対し、宗教改革の先駆者となった。英国で最初のプロテスタント(Protestant: ローマ教会に抗議を申し立てる者)であった。
14th C. William Langland
(ウィリアム・
ラングランド, 1331?-1400)
Piers the Plowman
「農夫ピアズの夢」
原題は、"The Vision of William concerning Piers the Plowman"(農夫ピアズについてのウィルの夢)。Dante(1264-1321)の「神曲(The Divine Comedy)」や Bunyan(1628-88)の「天路歴程(Pilgrim's Progress)」と同様、風刺的寓話物語である。
14th C. Layamon
(レアモン)
Brut
「ブルート、ブルータス」
英語で書かれた最初の物語文学。これは、フランスに渡ったイギリス生まれの詩人Robert Wace(ロバート・ウェイス)が、Geoffrey of Monmouth の「ブリトン王歴代史」をもとにしてフランス語の物語詩を書き、それが英国に逆輸入され、Layamon がそれをもとに書いたものである。この物語は、英雄アーサー王伝説、リア王と娘たちの物語、シンベリンの物語、アーサー王とその騎士たち、王妃ギネヴィアの物語などの題材を後の作品に提供したとして価値がある。
14th C. 作者不詳 Pearl
「真珠」
亡き女児を悼む父親の哀しみを歌った寓意的な詩であり、宗教詩と物語詩が融合されている。
14th C. Geroffrey Chaucer
(ジェフリ・
チョーサー, 1340-1400)
The House of Fame
「誉の宮」
Chaucer は中世英語を完成させた文学者である。この作品は愛の夢物語の寓意詩3部作。
14th C. Geroffrey Chaucer The Parliament of Fouls
「百鳥の集い」
聖バレンタインの日に、鷲や家鴨、鳩がそれぞれ配偶を得るという諷刺的夢物語。
14th C. Geroffrey Chaucer Troirous and Cryseyde
「トロイラスとクリセイデ」
ボッカチオの「恋のとりこ(Il Filostrato, the Young Man felled dy Love)」を手本にしたトロイ戦争に絡まる中世風恋物語。同じ題材で Shakespeare も物語を書いている。
14th C. Geroffrey Chaucer The Legend of Good Women
「善女伝」
愛に殉じた女性の列伝。クレオパトラ、Judith などが登場する。寓意的物語、最後の作品で、ヘロイック・カプレット(heroic couplet, 英雄詩形: 10音節の弱強格の詩行を2行ずつ脚韻していくもの)を初めて用いたとされる。
14th C. Geroffrey Chaucer The Canterbury Tales
「カンタベリ物語」
(1387-1400)
Chaucer の大代表作。カンタベリ寺院のトーマス・ア・ベケットの墓に詣でるため、London の Southwark の旅亭 Tabard に29人の巡礼が集まり、旅亭の主人の提案で、各人が往路 2つ、帰路 2つの物語をするという話。物語には、宮廷ロマン、通俗ロマン、古代伝説、民話、滑稽話、説教、動物寓話物語などが含まれ、English humour の源泉となる作品でもある。この作品は未完で、17,000行の韻文(22の詩)と2つの散文の計24の物語が残っている。
14th C. John Gower
(ジョン・ガワー,
1332?-1408)
Confessio Amantis, Vover's Confession
「恋人の告白」
Gower は Chaucer と同様、宮廷詩人で、Chaucer のライバルでもあり友人でもあった。この作品はロンドンの英語で書かれ、聖書や歴史、伝説から実例を挙げて恋愛観を述べる序曲に、様々な教訓を添えて、約100編の物語から成る。Gower の他の作品として、フランス語で書かれた「人間のかがみ」(Speculum Meditantis or Mirour de L'Omme)、ラテン語で書かれた「叫ぶ春の声」(Vox Clamantis, the Voice of One Crying) がある。
14th C. John Barbour
(1316-93)
-- スコットランドの詩の父と呼ばれる。スコットランド中興の祖ブルース王 (Robert Bruce, 1274-1329) の武勇を歌った。
14th C. Anderew of Wyntoun
(1350?-1420?)
-- ウィンタンのアンドリューは、スコットランドの歴史を韻文で書いた。
1423 スコットランド王 James I King's Quire
「御製集」
英国の Henry IV の捕虜となり英国に監禁されている間に王の姪に恋して書いた恋愛詩。
14th-15th C. John Lydgale(1370-1451) -- 詩人。ロンドンの風物をパノラマ風に描いた。
14th-15th C. Robert Henryson (1429-1450) -- 中世時代の詩人であるが、Geoffrey Chaucer の肖像画を描いたことで有名である。
15th C. Henry the Minstrel
(1470-92)
-- ブルース王以前の伝説的英雄を歌ったスコットランドの詩人。
15th C. Robert Henryson
(1429-1507)
The Testament of Cresseid
「クリセイドの遺言」
悲恋物語。トロイラスの純愛を裏切ったクリセイドの後日談。
15th C. Sir Thomas Malory
(1400?-70)
Le Morte D'Arthur
「アーサー王の死」
Malory は15世紀の偉大な散文作家であり、騎士でもあった。バッキンガム公爵の暗殺計画に参画した罪で幽閉され、獄中でこの作品を書いたといわれる。当時、すでに出来上がっていたアーサー王と円卓の騎士の伝説の各部分を扱ったフランスのロマンスを集大成した作品である。
15th C. William Caxton (1422-91) -- 散文作家であったが、イギリスで最初の印刷機を導入し、Malory の「アーサー王の死」や Chaucer の「カンタベリ物語」、Gower の「恋人の告白」などを大量印刷した。ちなみに、ドイツで活字印刷術を発明したのは Johannes Gutenberg (1400?-68)である。
1503 William Dunbar
(1460?-1530?)
The Thistle and the Rose
「薊とばら」
Chaucer の詩を模範とした寓意詩。ほかに諷刺詩「七戒の舞踏(The Dance of the Seven Deadly Sins)」がある。
15 Gavin Douglas
(1475?-1522)
The Palace of Honour
「徳義の宮」
寓意詩。ヴァージルの「イーニイド(Eneid)」 を英訳した。
15th C. 作者不詳
Ballad
民謡
この時期、「オッターバーンの戦(The Battle of Otterburn)」、「栗色の娘(The Nut Brown Maid)」、「ロビンフッド伝説(Robin Hood cycle)」などのすぐれた Ballad があるが、いつ頃作られたかは不明である。
 
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近代英語時代の文学 (Modern English: ModE) 1500-  


年代 (year) 作家 (writer) 作品 (work) 概要 (description)
16th C. Sir Thomas More(サー・
トーマス・モア, 1478-1535)
Utopia
「ユートピア」
Thomas More はカトリック教の殉教者であるが、人本主義者の一人でもあった。本書は理想的な共産主義的社会を描き、当時のイギリス社会の欠点を指摘し、戦争の否定や宗教の自由を述べている。この本はラテン語により書かれたが、1551年にRalph Robinson (レイフ・ロビンスン)によって英訳されて初めて英文学作品となった。
16th C. William Tyndale
(ウィリアム・
ティンダル, 1484-1536)
(聖書の英訳)
人本主義者で宗教改革家。新教の殉教者。オクスフォードとケンブリッヂに学び、ロンドンで聖書の英訳をするが、カトリック教からの制圧を受け、ドイツのマルティン・ルッターを訪ねて旧約聖書の英訳をした。しかし密告されて絞殺焚刑に処せられる。Tyndale の聖書はJohn Rogers (ジョン・ロジャース)により注釈が付けられ、英国に広く用いられた。またこの聖書を基に、James I 世の有名な「欽定英訳聖書(The Authorized Version of the Bible: King James's Bible)」が作られた。
1509 Stephen Hawes
(スティブン・
ホーズ,
1475-1530)
The Passtyme of Pleasure
「歓楽の慰」
寓意詩。この書はスペンサーの「牧人の暦」のさきがけとなった。Hawes は宮廷詩人でHenry VII に仕えていた。ほかに「美徳の鑑(Example of Virtue)」(1504)もある。
1545 John Skelton
(ジョン・スケルトン,
1460?-1529)
Colyn Cloute
「コリン・クラウト」
教会の腐敗を諷刺した作品。ほかにも痛烈な諷刺詩を書いて「スケルトニック」(Skeltonic)と呼ばれる独特な詩風を創作した。
16th C. Alexander Barclay
(1475?-1552)
The Eclogues
「牧歌、または、牧人の詩」
原題はギリシャ語で「選ばれた詩」という意味。
16th C. Sir Thomas Wyatt
(トーマス・ワイアット,
1503-42)
Songs and Sonnets
「歌とソネット集」
Wyatt は Henry VIII 世に仕えて、外交官としてイタリアやスペインで活躍した。イタリアからペトラルカとその一派が普及させた恋愛詩(amourist poetry)を持ち帰り、ソネット(sonnet)という詩形を輸入した。その詩形は Itarian Form または Petrarchan Form と呼ばれる。力強く中世騎士の風格のある彼の詩は、本書、別名「トテル雑集」(Tottel's Miscellany)に収められた。
16th C. Henry Howard, Earl of Surrey
(ヘンリ・ハワード,
1516?-47)
Songs and Sonnets
「歌とソネット集」
サリー伯 Henry Howard は、Wyatt と共に英詩にソネット形式を確立した。詩形は English Form または、シェイクスピアがこの詩形を用いて多くのソネットを作ったことから Shakesperean Form と呼ばれる。また、イタリアの詩を手本にブランク・ヴァース(blank verse)という詩形を、ヴァージルの「イーニイド(Aeneid)」の翻訳において初めて用いた。優雅な趣の彼の作品は本書、別名「トテル雑集」(Tottel's Miscellany)に収められた。
16th C. Thomas Sackville, Earl of Dorset
(トマス・サックヴィル,
1536-1603)
The Complaint of Buckingham
「バッキンガム公の嘆き」
この詩と「序詞(The Induction)」は、「奉行のかがみ(A Mirroure for Magistrates, 1550-1610)」と題するイギリス詩集に収められた。Sackville は Elizabeth I 世のもとで裁判官などをつとめた政治家でもあった。
1576 George Gascoigne
(ジョージ・ギャスコイン, 1535?-77)
The Steele Glasse
「鋼鉄の鏡」
諷刺詩。彼は法律を学び代議士になったが、抒情詩人としても優れ、悲劇や喜劇作家、文学評論家としての知識もあった。他に「隠者ハメットの物語(The Tale of Hametes the Heremythe)」がある。
1579 Edmund Spenser
(エドマンド・
スペンサー, 1552?-1599)
Shepherd's Calender
「牧人の暦」
エリザベス朝英詩の代表的詩人。彼は、仕立職人の息子としてロンドンで生まれる。父は清教徒であった。パトロンの力を得てCambridge に学ぶ。本書は牧人の12か月を歌ったものである。1月、3月、6月、12月は恋の素晴らしさを歌い、2月、5月、7月、9月は宗教と道徳について歌い、4月は Elizabeth 女王を讃え、8月は「歌合せ」について、10月は詩人(牧人)の理想を歌い、11月は Dido 夫人の死を悼むという詩である。この作品は清教徒精神(Puritanism)に基づいて書かれている。
16th C. Edmund Spenser The Faerie Queene
「仙界の女王(Gloriana)」
Spenser が書記官としてアイルランド赴任中に書いた作品。女王 Gloriana(即ち Elizabeth I世)が、年に一度の饗宴を12日間にわたり催し、女王の命により、毎日一人の騎士が冒険に出て、一年後の饗宴でその冒険談を披露するという物語。各日に旅立つ 12人の騎士はアリストテレス(Aristotle) の12の美徳(Vertues) の典型である。また、物語はアーサー王伝説に絡んでいる。これは教訓的寓意物語であり、Spenser は物語を用いて伝えたいと思う教訓を描いている。また、彼が独自に編み出した詩形「スペンサー連(Spenserian Stanza)」を用いて書いている。
1595 Edmund Spenser Epithalamion
「結婚祝歌」
Spenser 自身の結婚に霊感を受けて書いた詩。
1596 Edmund Spenser Prothalamion
「祝婚前曲」
ウスタ伯(Earl of Worcester)家の結婚を祝福した詩。
1595 Edmund Spenser Amoretii
「恋愛小曲集」
恋愛と美を歌った88篇のソネット集。
1595 Edmund Spenser Colin Clout's Come Home Again
「コリン・クラウツの再帰郷」
生活の喜びと幻滅を歌った。自伝的作品。
1580-84 Sir Philip Sidney
(フィリップ・
シドニー,
1554-86)
Astrophel and Stella
「アストロフェルとステラ」
100篇あまりのソネット集。
1580 Sir Philip Sidney
Arcadia
「アーケイディア」
故郷 Wilton に帰った時に妹のために書いた散文ロマンス。彼は戦争で重傷を受けながらも、"Thy need is greater than mine(汝の欲する気持は私の必要性よりも大きい)"と言い、末期の水を部下にゆずり戦死したので、その騎士ぶりが有名な語り草になっている。
1594 Michael Drayton
(マイケル・
ドレイトン,
1563-1631)
Idea's Mirror
「アイディアの鏡」
恋愛を歌ったソネット。ほかに、勇ましいバラッド、「アジンコートの戦(The Battle of Agincout)」(1598)や、30巻にわたり英国を描いた長編詩「多幸の国(Polyolbion)」(1612-22)がある。
1598 Ben Jonson
(ベン・ジョンソン
1573?-1637)
Every Man In His Humour
「人それぞれの気質」
劇作家であり、Spenser と並ぶ大詩人。軍隊を経て、1597年に役者として「海軍提督一座」という劇団に入る。本作品は喜劇で、ロンドンの Globe Theatre で上演された。ほかの代表的な喜劇作品として、「人それぞれの脱線(Every Man out of his Humour)」(1599)、「ボルポーネ・狐(Vorpone, or The Fox)」(1606)、「エピシーン・沈黙の女(Epicoene, or The Silent Woman)」(1609)、「錬金術師(The Alchemist)」(1610)、「バーソロミューの市(Bartholomew Fair)」(1614)がある。詩人として、「森林(The Forests)」(1616)、「下生え(Underwood)」(1640)などの詩集も残す。 彼の詩は古典的優雅(classical elegancies)が特徴である。
16th-17th C. John Donne
(ジョン・ダン, 1573-1631)
Holy Sonnets
「聖なるソネット」
詩人、宗教家として知られ、Spenser と並ぶ大詩人。冥想詩を書き、「形而上派の詩人たち」の祖となった。晩年はSt Paul's Cathedral の大僧正として生涯を閉じる。本作は信仰的情熱を歌ったものである。他の作品では、総称して"Anniversaries"(記念詩)と呼ばれる2作品、長編諷刺詩「精神の進歩(The Progress of the Soul)」(1601)とその続編「精神の進歩について(Of the Progress of the Soul)」(1612)や、哀歌「世界の解剖(An Anatomy of the World)」(1611)がある。また、「素晴らしき明日(The Good Morrow)」と"Twickenham Garden"は、詩集「歌とソネット集(Songs and Sonnets)」に収められている。彼の詩は、中世風の敏感と感性(mediaeval subtleties)を備えている。
1599 Sir John Davis
(ジョン・デイヴィス,
1596-1626)
Noce Teipsum
「汝自身を知れ」
霊魂不滅を歌った4行詩集。
- Lord Brooke, Sir Fulke Greville
(グレヴィル, 1554-1628)
On Wars
「戦争論」
冥想詩。ほかにソネット集、「シーリカ(Caelica)」。
1586-1609 William Warner
(ウィリアム・
ウォーナー,
1558-1609)
Albion's England
「アルビオンの英国」
ノアの洪水からエリザベス一世に至るまでの英国の歴史を物語った10,000行におよぶ長編詩。
1595 Robert Southwell
(ロバート・
サウスウェル, 1561-1595)
St Peter's Complaint
「聖ピーターのなげき」
宗教詩。彼はジェズイット派(Jesusit, ヤソ会士)の殉教詩人であった。
1595-1609 Samuel Daniel
サミュエル・ダニエル()
The Civil Wars between the Two Houses of Lancaster and York
「ランカスター・ヨーク両家の内乱」
7巻からなる韻文の年代記。
1563 John Fox
(ジョン・フォックス,
1516-1587)
The Book of Martyrs
「殉教者の本」
神学者。新教の立場で新教殉教者の伝記をラテン語で書き、英訳された作品。
1588-89 Martin Marprelate
(マーチン・マープリレト, ?)
Martin Marprelate Controversy
「マーチン・マープリレト論争」
清教徒が Martin Marprelate というペンネームで、国教に対して激しい批判のパフレットを出し、これに対して国教派も応戦のパンフレットを出して起こった論争が文学として残った。論争には Francis Bacon, Thomas Nashe, John Lyly, Robert Greene が加わり、鋭く清教徒に反論した。
1594-97 Richard Hooker
(リチャード・
フッカー,
1554?-1600)
Of the Laws of Ecclesiastical Polity
「教会政治の法則」
教会が絶対的権威のカトリシズム(Catholicism)、聖書に権威を置くプロテスタンティズム(Protestantism)、理性を重んじるルネサンス期の自由思想(Free Thinking)の中間に立って、英国教会に哲学的基礎を与えた書。全8巻にわたる。
1611 James I世
The Authorized Version of Bible
「欽定訳聖書」
James I 世は Lancelot Andrews (1555-1626)を編集長として作成した。
1566-67 William Painter
(ウィリアム・
ペインター,
1540-1594)
The Palace of Pleasure
「歓楽の殿堂」
全2巻の物語集。ローマのヘロドタス、プルーターク、リヴィ、タンタスや、イタリア作家マテオ・バンデルロの翻訳や翻案。本書はシェイクスピアの「アテネのタイモン」や「終わりよければすべてよし」、ボウモントとフレッチャー合作の「死の勝利」などの劇作の種本となった。ペインターはケンブリッジ出身でロンドン塔の書記だった。
1579- Sir Thomas North
(トーマス・
ノース
1523?-1601)
The Lives of the Noble Grecians and Romans
「高貴なギリシャ、ローマ人達の英雄伝」
本書を英訳した。(Plutarch,s Lives 「プルーターク英雄伝」)
1577 Raphael Holinshed
(ラファエル・ホリンシェッド, 1520-80)
Chronicles of England, Scotland, and Ireland
「イギリス、スコットランドおよびアイルランドの年代記」
ホリンシェッドは本書の England の年代記を書いた。シェイクスピアをはじめ多くの作家の作品に影響を与えた書である。
1579-80 John Lyly
(ジョン・リリー, 1554?-1606)
Euphues
「ユーフューズ」
「ユーフューズ - 機知の解剖(Euphues, the Anatomy of Wit)」と続編「ユーフューズと彼の英国(Euphues and his England)」からなる散文。"Euphues(ユーフューズ) "はギリシャ語で"Witty(才人)"の意味。"Euphuism(ユーフュイズム)"は詩的な表現をした散文で当時英国で流行した。
1592 Robert Greene
(ロバート・グリーン,
1560?-1592)
A Gloatsworth of Wit
「三文の智恵」
放蕩生活を送った様子を書いた自伝的作品。シェイクスピアを皮肉る内容がある。"gloat"とは当時の4ペンス銀貨で、三文の価値しかなかった。彼は"University Wit (大學出の才人たち)"の一人で、ケンブリッジで学んだ。また、「マミリア、イギリス貴婦人のかがみ(Mamilla; A Mirror or Looking-Glass for The Ladies of England)」(1583)はリリーのユーフュイズムが用いられた作品であり、「パンドストー、時の勝利(Pandosto, The Triumph of Time)」(1588)はシェイクスピアの「冬の夜ばなし」の素材となっている。
1596-1600 Thomas Deloney
(トーマス・デロウニ, 1543?-1600?)
Jack of Newbury
「ニューベリーのジャック」
機織職人の生活を描いた作品。彼自身も機織匠であり、さまざまな職人たちの仕事ぶりを素朴で写実的な手法で描き、「上品な職業(The Gentle Craft)」では靴職人の生活を描いている。
1594 Thomas Nashe
(トーマス・ナッシュ, 1567-1601)
The Unfortunate Traveller or the Life of Jack Wilton
「不運な旅人 - ジャック・ウィルトンの生涯」
サリー伯、トーマス・モア、マーティン・ルッターなどが登場し、London, Nettledom, Wittenberg, Venice などを舞台にした小説である。写実主義、リアリズム文学である。彼は Picaresque (ピカレスク:ボヘミアン、放蕩者)小説の祖と呼ばれる。
1597, 1612, 1625 Francis Bacon, Lord Verulam, and Viscount St. Albans
(フランシス・
ベイコン,
1561-1626)
The Essays, or Counsels Civil and Morall
「随筆 - 社会的道徳的勧告」
58編からなる随筆集、代表作。「美は果物に似ている。腐りやすく長持ちしない」「金銭は肥料に似ている。撒き散らさなければ役立たず」などの言葉が書かれている。Bacon はケンブリッジ大学のトリニティ学寮で法律を学び、王室顧問弁護士となった。また学者でもあった。
1605 Francis Bacon
The Advancement of Learning
「学問の進歩」
彼の幅広い知識により諸学問の総合的な体系を示した書。これは文学史ではなく科学史と哲学史に属する。
1620 Francis Bacon
Novum Organum
「新機構」
科学に関する書。彼は中世的な思考を脱却した新しい哲学体系の樹立を目指し、学理の究明に努めた。本書はアリストテレス以来の演繹法(deductive method)を排して、経験的帰納法(inductive method)の価値を主張し、それにより科学的に自然を観察、開拓し、人間のために利用するということを書いている。この書により、彼は近世哲学の祖と呼ばれるようになった。
1627 Francis Bacon
The New Atlantis
「ニュー アトランティス」
プラトンの「共和国」やトマス・モアの「ユートピア」と同様、理想郷を描いた作品。未完であるが、彼の作品中、最も文学的香気の高いものである。
1545? John Heywood
ジョン・ヘイウッド(1497-1580)
The Four P's
「4人のP」
Palmer (巡礼)、Pardoner (免罪符売り)、Pothecary (薬屋)、Pedler(行商人)の"P" の頭文字のつく4人が旅籠に居合わせ、ほらを吹きあう喜劇。間狂言(Interludes)と呼ばれ、喜劇的風刺的性格を持った単純な世俗劇作品である。
1550? Nicholas Udall
ニコラス・ユウダル(1505-56)
Ralph Roister Doister
「ラルフ・ロイスター・ドイスター」
英国初の本格的な喜劇。イートン校の校長だったユウダルがラテン語劇の代わりに生徒に上演させるために書いた作品。カスタンス夫人という未亡人に主人公ロイスター・ドイスターが求婚するという話で、主人公の災難や道化役マシュー・メリーグリークのいたずらなどが描かれ、いたるところにユーモアがある。
1553? William Stevenson
ウィリアム・スティーブンソン(?-1576)
Gammer Gurton's Needle
「ガートン婆さんの縫い針」
針を失くしたお婆さんのドタバタ喜劇。1566年にケンブリッジで上演された作品。
1561 Thomas Norton,
Thomas Sackville
Gorboduc
「ゴーボダック」
トーマス・ノートン(Thomas Norton, 1532-84)とトーマス・サックヴィル(Thomas Sackville, Lord Buckhurst, 1536-1608)の合作。モンマスのジェフリーの歴史の中より、古代英国王ゴーボダックの2王子フェレックスとポレックスが争って内乱になるという伝説を題材にした劇作品。エリザベス一世の即位後間もなく書かれた英国最初の本格的悲劇作品である。
1592 Thomas Kyd
トーマス・キッド(1558-95)
The Spanish Tragedy
「スペインの悲劇」
登場人物が皆死んでしまう悲劇。復讐悲劇を流行させ、「タイタス・アンドロニカス」、「ハムレット」などシェイクスピア悲劇への道を開いた。また、劇中劇という手法を初めて用いた作品である。
1590 George Peels
ジョージ・ピール(1558-98)
The Old Wives' Tale
「老妻物語」
喜劇作品。ほかに、「ダビデ王とベスサベ姫の恋(The Love of King David and Fair Bethsabe)」(1599)などの劇作品を書く。ピールはシェイクスピアやマーロウに次ぐ抒情詩人としても優れた才能を示した。
1589 Robert Greene
ロバート・グリーン(1560?-1601)
Friar Bacon and Friar Bungay
「僧ベイコンと僧バンゲイ」
風俗喜劇。これはシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」に匹敵し得る作品である。
1597 Thomas Nashe
トーマス・ナッシュ(1567-1601)
Isle of Dogs
「犬の島」
風刺劇。政治的な諷刺で上演禁止となり、ナッシュは一時投獄された。その脚本も焼却され内容は不明である。ほかに、宮廷喜劇「サマアの遺言(Summer's Last Will and Testament)」(1600)がある。Summer はヘンリー8世に仕えた道化師である。
1590 Christopher Marlowe
クリストファー・マーロウ(1564-93)
Tamburlaine the Great
「タンバレイン大王」
処女作。征服欲に基づく悲劇を描いた作品。第一部(1587)は農夫から身を起こし大王となったタンバレインがエジプト女王と結ばれる物語、第二部は女王没後の征服の物語が書かれている。マーロウはカンタベリーで靴屋の息子として生まれ、ケンブリッジを卒業後、劇の世界に身を投じた。シェイクスピア、ベン・ジョンソンに次ぐ大作家である。彼の劇は文芸復興の人本主義を代表し、マキャベリズムや国家観念、個性尊重が強調されすぎていたので、時として無神論者の作品と疑われることがある。彼のblank verse (ブランク・ヴァース)はシェイクスピアに大きな影響を与えた。
1592-1593 Christopher Marlowe
The Tragical History of Dr Faustus
「ファウスタス博士の悲劇的生活」
あくなき知識欲が引き起こす悲劇を描いた作品。ゲーテの詩劇「ファウスト」に影響を与えたと言われる。
1589? Christopher Marlowe
The Jew of Malta
「マルタ島のユダヤ人」
マルタ島のユダヤ人の金貸しバラバス(Barabas)の物欲と悲惨な末路を描いた作品。シェイクスピアの「ヴェニスの商人(The Marchant of Venice)」はこの作品を念頭に置いて書かれた証拠が多くある。
1594 Christopher Marlowe
Dido, Queen of Cartago
「ダイドウの悲劇」
ケンブリッジ在学中に書いた未完の作品。後に Thomas Nashe が加筆して完成させ上演した。他の作品に、史劇「エドワード二世(Edward II)」(1594)、「パリの虐殺(Massacre at Paris)」(1594)などがある。
 
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