ギャラリー


池波正太郎自筆画展

フランスの人と風景

居酒屋B・O・Fのセトル・ジャン
アルルのローヌ河畔
フランスの馬肉屋
ニース
花売りのマダム


東京の情景

大川と待乳山聖天宮  大川と待乳山聖天宮
月夜の舟入り(佃島)
月夜の舟入り
最後の都電  最後の都電
浅草・東京クラブ  東京浅草クラブ
日曜日の魚河岸  日曜日の魚河岸
柳橋の夜景  柳橋の夜景
©Toyoko Ikenami

 この画文集『東京の情景』は、アサヒグラフに連載したもので、久しぶりに、東京の彼方此方を取材に歩きまわった。そして東京が、おもいのほかに美しく変貌したことに、あらためて気づいた。
 林立する高層ビル、整備された公園。緑も意外に多い。
 戦後、四十年近くたって、焼野原へ植えた樹が育ち、場所によっては緑の洪水といってさしつかえないほどの景観を見せている。
 だが、私のように東京で生まれ育ったものは、このメトロポリスに東京を感じない。
 夜の原宿あたりは、まるでパリのシャンゼリゼだ。美しいが、私の東京ではない。
 そうした私の眼がとらえた、むかしの東京の残片が、この画文集だ。しかし、去年に描いた画の建物や景観が、たった一年のうちに打ち毀された例は一、二にとどまらぬ。
 ともかくも車輛の洪水と、高いばかりで全くつまらない姿をさらしているビルディングばかりで、いまの東京を絵にするのはむずかしい。
 その一方で、絵になる〔都市美〕が生まれつつあることも事実だろう。そのかわり東京は、うっかり水ものめない都市になってしまった。
 それにしても…。  とにかく多すぎる。大小の自動車と人間が多すぎる。
   昭和62年2月
         池波正太郎『東京の情景』あとがきより